2013年09月22日
アルツハイマーは「第三の糖尿病」
アルツハイマーは「第三の糖尿病」
アルツハイマー病治療の”突破口”が見えた!
白澤卓二 順天堂大学教授
アルツハイマー病で医療機関を受診した人は、平成20年は24万人。しかし平成23年には36.6万人と、たった三年で1.5倍に増えている。治療法がないといわれてきたこの厄介な病気を、「脳の糖尿病」だとする研究成果が最近発表された。順天堂大学の白澤卓二教授が語る。
大きく認知症という中に、いろいろな種類の病気があります。一番多いのがアルツハイマー病で、次が脳血管性の認知症です。
「これまで糖尿病は、インスリンがまったく分泌できない1型糖尿病と、インスリンの効きが悪くなる2型糖尿病とに分類されてきたが、アルツハイマー病は”3型糖尿病”と呼ばれるべき証拠が得られた」
こう語ったのは、米ペンシルバニア大学医学部精神医学・神経学のスティーブンーアーノルド教授です。よくぞこの名前を付けたものだと、私は感心しました。
脳も筋肉も、グルコース(ブドウ糖)をエネルギーとしています。グルコースを利用するために必要なのが、すい臓から分泌されるホルモンのインスリンです。インスリンの効きが悪くなってグルコースをエネルギーに変えることができないと、血液中の血糖値が高いままになり、脳も筋肉も働きが悪くなります。これが糖尿病の大半を占める「2型」の症状。インスリンが出ない「1型糖尿病」は、いわゆるインスリン依存型の糖尿病です。
アーノルド教授はなぜ、アルツハイマー病を”3型糖尿病”と言ったのか。それは、脳の神経細胞におけるインスリン抵抗性を調べた結果でした。脳の中で記憶を司っているのは、大脳辺縁系の海馬と呼ばれる部分です。アルツハイマー病を発症するとこの海馬に「老人斑(シミ)」が現れます。これは海馬の神経細胞が死滅して、記憶障害を起こしている状態です。
アーノルド教授らの研究チームは、糖尿病ではないアルツハイマー病患者の脳の海馬を調べました。すると、糖尿病ではないのに、脳内のインスリンの効きが悪く、神経細胞がグルコースを使えなくなっていることがわかったのです。すなわち、”脳の糖尿病”といって差し支えない状態でした。
グルコースは十分にあるし、インスリンが枯渇しているわけでもありません。しかし、グルコースを利用できないために、エネルギーを作れないのです。その結果、脳の神経細胞が変性して死んでしまい、アルツハイマー病の症状が出たというわけです。
原因は糖の代謝異常
こうした認知症に関する新しい論文はアメリカばかりでなく、日本にも研究報告があります。
九州大学の環境医学分野の清原裕教授は、福岡県の久山町に住む60歳以上で認知症のない高齢者を、十五年にわたって追跡調査しました。1022人の対象者のうち、15年の調査中に232人が認知症になりました。合わせて糖尿病の有無を調べたところ、”糖尿病予備軍”といえる人は、アルツハイマー病の発症危険率が正常な高齢者に比べて60%、糖尿病患者を含めると73%も高いことがわかりました。
また病理解剖の結果、血中インスリン値の高い人ほど、右で述べたアルツハイマー病の特徴である「老人斑」という脳のシミが多かったのです。
東京医大老年病科の羽生春夫教授は、糖尿病外来の患者240人に対して認知機能の検査を行ないました。すると5%が認知症で、32%に認知症の疑いがあると診断されました。羽生教授は、「糖尿病や高血圧の患者に、未診断のアルツハイマー病が潜んでいる」と指摘しています。
羽生教授は軽い糖尿病を抱える早期アルツハイマー病の患者に対して、「ピオグリタゾン」という経口の糖尿病の薬を二年間投与し、認知機能に及ぼす影響も調べました。すると糖尿病の薬なのに、投与された人は投与さ初なかった人に比べ、二年たった後も認知機能が保たれていました。
今後、脳の神経細胞における糖の代謝異常を治すことが、アルツハイマー病の治療や予防につながるかもしれません。
糖尿病の研究では長い間、肝臓やすい臓(脂肪や筋肉の細胞に注目が集まっていて、脳に与える影響はほとんど注目されませんでした。脳にもインスリンの受容体がありますが、どんな働きをしているか、よくわかりませんでした。2型の糖尿病を発症した人がみな、脳の認知機能を急激に悪くさせていくわけでもないので、あまり研究がなかったのです。
ところがしっかり調べてみると、糖尿病の人はそうでない人より二倍もアルツハイマー病になりやすい。糖尿病は、アルツハイマー病の大きなリスクになっていることがわかりました。こうして二つの病気の関連性が、疫学的に明らかになってきたのです。
「ケトン体」を活用せよ
人間の脳は、二種類のエネルギーソースを使うことができます。ひとつは、ここまで述べてきたグルコース。もうひとつは「ケトン体」です。グルコースを使い果たしたとき、体内の脂肪細胞を分解して作られるのがケトッ体。グルコースがあるときはグルコースを使い、なくなったときや使えないときに限って、自然にケトン体を使う仕組みになっています。
脳が糖尿病と同じ状態のアルツハイマー病になると、グルコースを利用できません。しかしケトン体は利用できます。脳のエネルギー不足がアルツハイマー病の原因と考えると、ケトン体を与えることによって、神経細胞の活性が元に戻り、アルツハイマー病の症吠が改善される可能性があるわけです。
しかも、ケトン体を使ったときのほうが、グルコースを使うより脳のパフォーマンスは高くなることがわかっています。アルツハイマー病だけでなく、神経変性疾患のことごとくに効果が出ています。
実はこのケトン体を一番多く含み、摂取しやすいのがココナッツオイルです。
ココナッツオイルというのは、中鎖の飽和脂肪酸です。脂肪には、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があります。肉や乳製品に含まれるのが飽和脂肪酸で、主としてエネルギー源になります。一方、魚や植物油に入っているのが不飽和脂肪酸です。ココナッツオイルは植物由来ですが、なぜか飽和脂肪酸です。しかも中鎖の飽和脂肪酸というのは、吸収されやすく、すぐエネルギーに変わり、脂肪として蓄積されにくい性質をもっています。
体内でケトン体を作るためには、グルコースをシャットアウトしなければなりませんが、ココナッツオイルを口から食べれば、外から簡単に補給できます。最近ではこのココナツオイルがアルツハイマー病の治療に効果があるという報告もあります。
私は最近ますます、食事の重要性に注目すべきだと考えるようになりました。逆に言うと、食事を間違えていることによってアルツハイマー病になっている可能性も十分あります。脳にいいものをしっかり食べていれば、こうした病気にはならないはずです。
文芸春秋 2013年5月号
特集・医療と健康の常識を疑え
【関連記事】
・ ハウステンボス認知症セミナー
・ アミロイドβの蓄積が認知症の原因とは限らない
・ 第9回 認知症サプリメント研究会
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・ ヤマイモ成分がアルツハイマー病に効果
・ 脳機能をケアする「水素配合ブレインフード」
・ アルツハイマー病に驚くべき改善効果
・ アルツハイマー、及びレビー小体認知症患者の認知機能改善作用としてのTSH1サプリメント
・ 65歳以上の高齢者における認知症は15%、462万人
アルツハイマー病治療の”突破口”が見えた!
白澤卓二 順天堂大学教授
アルツハイマー病で医療機関を受診した人は、平成20年は24万人。しかし平成23年には36.6万人と、たった三年で1.5倍に増えている。治療法がないといわれてきたこの厄介な病気を、「脳の糖尿病」だとする研究成果が最近発表された。順天堂大学の白澤卓二教授が語る。
大きく認知症という中に、いろいろな種類の病気があります。一番多いのがアルツハイマー病で、次が脳血管性の認知症です。
「これまで糖尿病は、インスリンがまったく分泌できない1型糖尿病と、インスリンの効きが悪くなる2型糖尿病とに分類されてきたが、アルツハイマー病は”3型糖尿病”と呼ばれるべき証拠が得られた」
こう語ったのは、米ペンシルバニア大学医学部精神医学・神経学のスティーブンーアーノルド教授です。よくぞこの名前を付けたものだと、私は感心しました。
脳も筋肉も、グルコース(ブドウ糖)をエネルギーとしています。グルコースを利用するために必要なのが、すい臓から分泌されるホルモンのインスリンです。インスリンの効きが悪くなってグルコースをエネルギーに変えることができないと、血液中の血糖値が高いままになり、脳も筋肉も働きが悪くなります。これが糖尿病の大半を占める「2型」の症状。インスリンが出ない「1型糖尿病」は、いわゆるインスリン依存型の糖尿病です。
アーノルド教授はなぜ、アルツハイマー病を”3型糖尿病”と言ったのか。それは、脳の神経細胞におけるインスリン抵抗性を調べた結果でした。脳の中で記憶を司っているのは、大脳辺縁系の海馬と呼ばれる部分です。アルツハイマー病を発症するとこの海馬に「老人斑(シミ)」が現れます。これは海馬の神経細胞が死滅して、記憶障害を起こしている状態です。
アーノルド教授らの研究チームは、糖尿病ではないアルツハイマー病患者の脳の海馬を調べました。すると、糖尿病ではないのに、脳内のインスリンの効きが悪く、神経細胞がグルコースを使えなくなっていることがわかったのです。すなわち、”脳の糖尿病”といって差し支えない状態でした。
グルコースは十分にあるし、インスリンが枯渇しているわけでもありません。しかし、グルコースを利用できないために、エネルギーを作れないのです。その結果、脳の神経細胞が変性して死んでしまい、アルツハイマー病の症状が出たというわけです。
原因は糖の代謝異常
こうした認知症に関する新しい論文はアメリカばかりでなく、日本にも研究報告があります。
九州大学の環境医学分野の清原裕教授は、福岡県の久山町に住む60歳以上で認知症のない高齢者を、十五年にわたって追跡調査しました。1022人の対象者のうち、15年の調査中に232人が認知症になりました。合わせて糖尿病の有無を調べたところ、”糖尿病予備軍”といえる人は、アルツハイマー病の発症危険率が正常な高齢者に比べて60%、糖尿病患者を含めると73%も高いことがわかりました。
また病理解剖の結果、血中インスリン値の高い人ほど、右で述べたアルツハイマー病の特徴である「老人斑」という脳のシミが多かったのです。
東京医大老年病科の羽生春夫教授は、糖尿病外来の患者240人に対して認知機能の検査を行ないました。すると5%が認知症で、32%に認知症の疑いがあると診断されました。羽生教授は、「糖尿病や高血圧の患者に、未診断のアルツハイマー病が潜んでいる」と指摘しています。
羽生教授は軽い糖尿病を抱える早期アルツハイマー病の患者に対して、「ピオグリタゾン」という経口の糖尿病の薬を二年間投与し、認知機能に及ぼす影響も調べました。すると糖尿病の薬なのに、投与された人は投与さ初なかった人に比べ、二年たった後も認知機能が保たれていました。
今後、脳の神経細胞における糖の代謝異常を治すことが、アルツハイマー病の治療や予防につながるかもしれません。
糖尿病の研究では長い間、肝臓やすい臓(脂肪や筋肉の細胞に注目が集まっていて、脳に与える影響はほとんど注目されませんでした。脳にもインスリンの受容体がありますが、どんな働きをしているか、よくわかりませんでした。2型の糖尿病を発症した人がみな、脳の認知機能を急激に悪くさせていくわけでもないので、あまり研究がなかったのです。
ところがしっかり調べてみると、糖尿病の人はそうでない人より二倍もアルツハイマー病になりやすい。糖尿病は、アルツハイマー病の大きなリスクになっていることがわかりました。こうして二つの病気の関連性が、疫学的に明らかになってきたのです。
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脳が糖尿病と同じ状態のアルツハイマー病になると、グルコースを利用できません。しかしケトン体は利用できます。脳のエネルギー不足がアルツハイマー病の原因と考えると、ケトン体を与えることによって、神経細胞の活性が元に戻り、アルツハイマー病の症吠が改善される可能性があるわけです。
しかも、ケトン体を使ったときのほうが、グルコースを使うより脳のパフォーマンスは高くなることがわかっています。アルツハイマー病だけでなく、神経変性疾患のことごとくに効果が出ています。
実はこのケトン体を一番多く含み、摂取しやすいのがココナッツオイルです。
ココナッツオイルというのは、中鎖の飽和脂肪酸です。脂肪には、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があります。肉や乳製品に含まれるのが飽和脂肪酸で、主としてエネルギー源になります。一方、魚や植物油に入っているのが不飽和脂肪酸です。ココナッツオイルは植物由来ですが、なぜか飽和脂肪酸です。しかも中鎖の飽和脂肪酸というのは、吸収されやすく、すぐエネルギーに変わり、脂肪として蓄積されにくい性質をもっています。
体内でケトン体を作るためには、グルコースをシャットアウトしなければなりませんが、ココナッツオイルを口から食べれば、外から簡単に補給できます。最近ではこのココナツオイルがアルツハイマー病の治療に効果があるという報告もあります。
私は最近ますます、食事の重要性に注目すべきだと考えるようになりました。逆に言うと、食事を間違えていることによってアルツハイマー病になっている可能性も十分あります。脳にいいものをしっかり食べていれば、こうした病気にはならないはずです。
文芸春秋 2013年5月号
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Posted by suiso at 09:56
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