2013年08月04日

65歳以上の高齢者における認知症は15%、462万人

認知症とはどういうものか?

認知症とは、いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったためにさまざまな障害が起こり、生活するうえで支障が出ている状態(およそ6ヵ月以上継続)を指します。

認知症を引き起こす病気のうち、もっとも多いのは、脳の神経細胞がゆっくりと死んでいく「変性疾患」と呼ばれる病気です。アルツハイマー病、前頭・側頭型認知症、レビー小体病などがこの「変性疾患」にあたります。

続いて多いのが、脳梗塞、脳出血、脳動脈硬化などのために、神経の細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなり、その結果その部分の神経細胞が死んだり、神経のネットワークが壊れてしまう脳血管性認知症です。
出典:認知症サポーター養成講座標準教材(特定非営利活動法人地域ケア政策ネットワーク 全国キャラバンメイト連絡協議会作成)

高齢になるほど高い認知症出現率
高齢になるほど高い認知症出現率
大塚俊男「日本における痴呆性老人数の将来推計」日精協誌 20巻8号:65-69, 2001年8月

認知症高齢者の現状(平成22年) - 厚生労働省

認知症有病率:65歳以上の高齢者における認知症は15%、462万人

研究目的
65歳以上の高齢者について「専門医による医学的判定」に基づき、全国規模での認知症有病率および有病者数、認知症前駆状態である軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment,以下MCI)の推定を試みる。同時に認知症者における介護保険によるサービスの利用実態を明らかにする。

研究方法
平成22年度に全国の各地域で疫学調査の結果に鑑み、高齢者人口の少なさに注目して、つくば市、福岡県久山町、大牟田市の中心部で調査した。いずれの地域でも無作為抽出により調査対象を選び、平成23年10月以降に、今日の世界的な認知症診断基準に則った評価と診察を行い、これに基づいて認知機能レベルを判定した。3段階からなる調査のうち、第1段階は事前調査員の家庭訪問による家族への聞き取りと、自宅または会場での調査員による対象者本人への面接調査である。第2段階は医師の面接調査、第3段階はMRI撮像と血液検査等である。用いるテストは今日の世界的スタンダード(Alzheimer Disease Neuroimaging Initiative: ADNIで用いられているテスト、また 精神状態短時間検査-日本版Mini Mental State Exam-Japanese : MMSE-J)で統一した。

結果と考察
今回の3地区の結果は前回の調査と基本的に同じ傾向を示した。すなわち都鄙によらず人口ピラミッドを補正したとき、認知症有病率は15%と推定された。この数値は、従来わが国で推定されてきた認知症の有病率10%程度に比べて高値である。その背景については、高齢者人口とくに後期高齢者人口の伸びと、全地域で統一された調査方法を用いる、自宅不在者も入院・入所先にて調査する、介護保険情報を活用する、といった取り組みによる診断率の向上があると考えられた。

結論
全国の65歳以上の高齢者における認知症有病率は15%と推定され、推定有病者数は平成22年時点で約439万人、平成24年時点で462万人と算出された。従来予想よりも多いが、そこには急激な高齢者人口の増加、平均寿命の伸びと診断方法の相違が寄与していると思われる。

【出典】厚生労働科学研究成果データベース
「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応」
研究代表:朝田 隆(筑波大学 医学医療系臨床医学域)



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Posted by suiso at 21:57
学術発表
この記事へのコメント
認知症施策の現状について
2014年11月19日 第115回 社保審-介護給付費分科会
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000065682.pdf

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http://www.mext.go.jp/b_menu/boshu/detail/__icsFiles/afieldfile/2014/09/11/1351890_2.pdf


脳科学研究戦略推進プログラム・脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト
平成26年度要求額:893百万円
科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2013/12/05/1342054_5.pdf

社会性等のヒト高次脳機能の理解のためには分子レベルのミクロな研究と脳画像レベルのマクロな研究のギャップをつなぐ研究が必要となる。ヒトに近い高次脳機能を有し、遺伝子操作が可能な霊長類はこれらギャップをつなぐ研究モデルとして極めて有用である。日本が世界に対して強みを持つ霊長類の遺伝子操作技術、光学系技術等のさらなる効率化・高度化を行うことで、霊長類の高次脳機能を担う神経回路の全容をニューロンレベルで解明し、精神・神経疾患の克服や情報処理技術の高度化等に貢献する。
研究振興局ライフサイエンス課
http://www.lifescience.mext.go.jp/files/pdf/n1332_06.pdf

研究は細胞やニューロンレベルへと、どんどん細分化して全体としての人間そのものをとらえる研究に予算はつかない。

平成27年度文科省概算要求等
http://masahitoyamagata.blog.jp/archives/2001383.html
Posted by suisosuiso at 2015年01月15日 23:40