2014年01月27日
NHKスペシャル:アルツハイマー病をくい止めろ!
1月19日に放送されたNHKスペシャルです。
認知症800万人時代。
去年発表された厚生労働省研究班の調査結果によると、'12年時点で65歳以上の認知症患者は約462万人、予備軍(生活に支障をきたさない程度の軽度認知障害)を含めると、860万人以上。実に、65歳以上の4人にひとりが認知症ということになる。
深刻なのがアルツハイマー病だ。認知症に占める割合がおよそ7割と最も高く、近年発症者が急増している。
アルツハイマー病は、高齢になるにつれ脳の神経細胞が急激になくなっていく病気で、死んだ細胞を戻す治療は難しい。未だに完治させる方法は無い。団塊の世代が、今後この病を発症する時代へと突入する。
世界的に患者が急増すると予測されている認知症について、去年G8各国が話し合う初めての「認知症サミット」がロンドンで開催された。世界的規模でも、今後の重要な課題である。
米国研究製薬工業協会の試算では、米国のアルツハイマー病患者数は2050年までに1,350万人へと飛躍的に増加すると推定される。患者のケアにかかる費用も年間1兆800億ドルへと5倍に増えると考えられている。この額は国土安全保障省の今年の年間予算の約25倍に相当する。
世界では今、アルツハイマー病の進行を食い止め予防する「予防的治療」に注目が集まっている。きっかけは、病が発症するまでに25年もの年月がかかることが、大規模な追跡調査から明らかになったことだ。症状が出始めるはるか前から薬を投与して予防。既に症状が出始めている場合でも、進行を食い止める新薬の開発が最終段階を迎えている。
米国研究製薬工業協会(PhRMA)の2013年の研究開発報告書によると、アルツハイマー病についてのアメリカでの開発中の薬は94種類ある。1998年から2011年までに101件の薬が開発されたが成功しなかった。わずか3種の薬の効果が認められたが、病気の進行のかなりおだやかな影響を与えるにすぎない。
アルツハイマー症は、発症の25年前からアミロイドベータが蓄積していく。そこから遅れてタウが発生して神経細胞を破壊していく。そして海馬が徐々に縮小し、アルツハイマー型認知症が発症する。認知症が発症した後は、アミロイドベータの減少がみられることから、必ずしもアミロイドベータが減少したから症状が改善するとは限らない。
問題は、アミロイドベータが蓄積する理由となる前駆物質にあると考えられる。アミロイドベータの画像診断は、必ずしもアルツハイマー病の進行とは一致しない論文が、アメリカ医師会雑誌JAMA Internal Medicineの2014年1月号に掲載された。「AβPETの結果が陽性でもアルツハイマー病と診断できないばかりか、軽度認知障害MCIの進行の危険性について正確に予測するためことにも使えない」と記述している。AβPETの診断は社会保障の給付対象にならない。
(※ この項は放送に含まれていない)
さらに国立長寿医療センターのプログラムで、運動不足や睡眠不足の解消が意外な効果を発揮することも分かってきた。
“宿命の病”から、“予防できる病”へ…。世界各地でアルツハイマー病に立ち向かう最先端の治療現場に迫る。
アルツハイマー病をくい止めろ!
2014年1月19日(日)午後9時00分~9時49分
http://www.nhk.or.jp/special/detail/2014/0119/index.html
【関連記事】
・ ハウステンボス認知症セミナー「認知症の予防と改善」
・ アミロイドβの蓄積が認知症の原因とは限らない
・ 第9回 認知症サプリメント研究会
・ 「認知症800万人時代」この国に何が起きるのか
・ ヤマイモ成分がアルツハイマー病に効果
・ 脳機能をケアする「水素配合ブレインフード」
・ アルツハイマー病に驚くべき改善効果
・ アルツハイマー、及びレビー小体認知症患者の認知機能改善作用としてのTSH1サプリメント
・ 65歳以上の高齢者における認知症は15%、462万人
認知症800万人時代。
去年発表された厚生労働省研究班の調査結果によると、'12年時点で65歳以上の認知症患者は約462万人、予備軍(生活に支障をきたさない程度の軽度認知障害)を含めると、860万人以上。実に、65歳以上の4人にひとりが認知症ということになる。
深刻なのがアルツハイマー病だ。認知症に占める割合がおよそ7割と最も高く、近年発症者が急増している。
アルツハイマー病は、高齢になるにつれ脳の神経細胞が急激になくなっていく病気で、死んだ細胞を戻す治療は難しい。未だに完治させる方法は無い。団塊の世代が、今後この病を発症する時代へと突入する。
世界的に患者が急増すると予測されている認知症について、去年G8各国が話し合う初めての「認知症サミット」がロンドンで開催された。世界的規模でも、今後の重要な課題である。
米国研究製薬工業協会の試算では、米国のアルツハイマー病患者数は2050年までに1,350万人へと飛躍的に増加すると推定される。患者のケアにかかる費用も年間1兆800億ドルへと5倍に増えると考えられている。この額は国土安全保障省の今年の年間予算の約25倍に相当する。
世界では今、アルツハイマー病の進行を食い止め予防する「予防的治療」に注目が集まっている。きっかけは、病が発症するまでに25年もの年月がかかることが、大規模な追跡調査から明らかになったことだ。症状が出始めるはるか前から薬を投与して予防。既に症状が出始めている場合でも、進行を食い止める新薬の開発が最終段階を迎えている。
米国研究製薬工業協会(PhRMA)の2013年の研究開発報告書によると、アルツハイマー病についてのアメリカでの開発中の薬は94種類ある。1998年から2011年までに101件の薬が開発されたが成功しなかった。わずか3種の薬の効果が認められたが、病気の進行のかなりおだやかな影響を与えるにすぎない。
アルツハイマー症は、発症の25年前からアミロイドベータが蓄積していく。そこから遅れてタウが発生して神経細胞を破壊していく。そして海馬が徐々に縮小し、アルツハイマー型認知症が発症する。認知症が発症した後は、アミロイドベータの減少がみられることから、必ずしもアミロイドベータが減少したから症状が改善するとは限らない。
問題は、アミロイドベータが蓄積する理由となる前駆物質にあると考えられる。アミロイドベータの画像診断は、必ずしもアルツハイマー病の進行とは一致しない論文が、アメリカ医師会雑誌JAMA Internal Medicineの2014年1月号に掲載された。「AβPETの結果が陽性でもアルツハイマー病と診断できないばかりか、軽度認知障害MCIの進行の危険性について正確に予測するためことにも使えない」と記述している。AβPETの診断は社会保障の給付対象にならない。
(※ この項は放送に含まれていない)
さらに国立長寿医療センターのプログラムで、運動不足や睡眠不足の解消が意外な効果を発揮することも分かってきた。
“宿命の病”から、“予防できる病”へ…。世界各地でアルツハイマー病に立ち向かう最先端の治療現場に迫る。
アルツハイマー病をくい止めろ!
2014年1月19日(日)午後9時00分~9時49分
http://www.nhk.or.jp/special/detail/2014/0119/index.html
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Posted by suiso at 12:12
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この記事へのコメント
★アルツハイマー病のアミロイド画像診断の有益性はまだ不確か
(1月15日/アメリカ)
アルツハイマー病診断で「アミロイドベータ陽電子放出型断層撮影法Amyloid-βPositron Emission Tomography(AβPET)」の臨床上、有益であることを評価できるデータはとても少ないことが、新たな文献研究でわかりました。
ボストンにある「臨床・経済評価研究所Institute for Clinical and Economic Review」のスティーヴン・パールソンSteven D. Pearson医師(写真左上)が指導したこの研究の論文筆者は「AβPETの結果が陽性でもアルツハイマー病と診断できないばかりか、軽度認知障害MCIの進行の危険性について正確に予測するためことにも使えない」と記述しています。
脳の画像検査に関する現行の償還払いについての「Centers for Medicare and Medicare Services (CMS)(メディケア・メディケイドセンター)」の評価した資料も含めた今回の文献研究の論文がアメリカ医師会雑誌のJAMA Internal Medicineの2014年1月号に掲載されました。
2013年4月、「アメリカ政府食品医薬品局(FDA)」は、florbetapir F-18(イーライリリーEli LillyのアミヴィッドAmyvid)を使った脳のAβ 斑の蓄積を確認するAβPETを承認しました。この検査でアミロイド斑が認められない陰性結果は、認知機能 障害がアルツハイマー病による可能性は低いと示唆するとしました。しかし、Aβ 斑が認められた陽性の結果についてアルツハイマー病と診断できることが確立されたわけではありません。
2013年7月、同センターは、公的意見のための決定草案を発表し、9月27日、最終判断覚え書が公表しました。この最終決定でCMSは以下のとおり結論付けました。
「社会保障法Social Security Actによる給付されていない画像検査であるAβPETを実施することは疾患、あるいは外傷の診断や治療、あるいは認知症あるいは神経退行性疾患をもつ被保険者の機能の改善のために合理的でかつ必要性があると結論付けるだけの十分な証拠はない」
しかしながらCMSは、この画像検査を向上させる二つのプロセスがあるとも結論付けています。第一は、アルツハイマー病と前頭側頭型認知症FTDといった狭義の臨床的鑑別診断が困難な場合にアルツハイマー病を除外するために行われる場合。第二は、アルツハイマー病の治療および予防に関する臨床研究を成果あるものにするための場合です。このようにしてCMSは、ある種の基準を満たす臨床研究に参加する患者についてはAβPETを給付対象とすることになるでしょう。
したがって、アルツハイマー病のよりよい治療や予防の開発、臨床的に鑑別が困難な診断の解決を目的とする研究に限定されます。この種の臨床研究ではCMSの承認が必要で、研究に参加する人が相応しい集団からの者であり、比較実行可能で縦断的な研究であるべきです。また研究が適切であるということは、前向きで無作為で最終的に剖検による診断を行えるということです。さらに、研究に使われる放射性追跡物質はFDAが承認したものに限られます。CMSの覚え書には「これらに該当しないその他すべての場合は給付されない」と記載があります。
新たに発表された今回の文献研究の論文は、CMSの結論を支持するに有効な研究結果の概要を示しているのです。この文献の研究者は、診断面の正確さを評価した14のAβPET研究と、診断に関わる印象へのこの種の検査の影響を評価した1つの研究文を取り上げました。予測されたとおり、臨床的なAβPET画像検査では無作為の研究がありませんでした。
診断の正確さを評価した14の研究のうち、13は臨床診断あるいはアルツハイマー病の「究極基準」である剖検と画像検査の結果を比較してものです。生体組織検査の結果と比較したAβPET結果の感受性と特異性に関する重要な研究では、医師によって診断された51歳以上の死期が近い患者が対象となり、これらと若年で健康な対象者とが比較されています。この研究では、生体検査によると、すべての患者の66%がアルツハイマー病と診断されました。
個々の画像を解釈する複数の人たちによる研究では、分析の結果、AβPETの感受性中間値は92%、特異性は95%でした。しかしながら、その幅は感受性においては69から95%、特性においては90から100%でした。
診断に関するひとつの研究は、MCIから完全な認知症になる進行の可能性という予後について有益な情報が得られるかのAβPETの能力を評価しています。この研究では、AβPETの結果が陽性である場合、複数の認知機能がかなりの低下することと相関するとされています。MCIの高齢者のうち、AβPETが陽性だった人の29%は18か月以内に完全な認知症になり、陰性の結果だった人では10%が完全な認知症になりました。
しかしながら、今回の研究論文の筆者は、「資料からみると、Aβ PET陽性の人で認知機能の著しい低下が起こるのかどうか、また何時起こるのかを予測するには証拠が不十分である」と指摘しています。
検査結果が診断に与える影響に関する研究は一つだけです。この研究ではアルツハイマー病と疑われる229人について調べ、医師はAβPETの検査の前後に仮の診断を示し、また患者の管理計画も立てます。
AβPETの画像解釈は全事例の54.6%で診断の変化に相関しました。少なくとも事例の85%で、少なくとも決めた管理方針の一分野―例えば、コリンエステラーゼ阻害剤あるいはメマンチンの使用―が変更されました。
これまでのAβPETに関する少ない研究では、AβPETの検査結果が臨床面で管理や患者の状態を改善しているかどうかについては評価されていません。さらに研究者は、アルツハイマー病以外の認知症の患者また生活設計能力について画像検査で生じる利害についても評価がありません。
その他の生じうる問題として、利用可能な研究結果から臨床検査を行うことを検討するには、結果がすべて患者を代表してはいないということがあります。その理由は、これらの研究では、かなり研修を受けた医師やアルツハイマー病の可能性の高い患者が参加していることです。
パールソン医師らは、「AβPET検査の陽性の結果について臨床的有用性はまだ不確実である」と結論づけ、さらに以下の指摘をしています。
「もし検査するならば、認知機能が正常な高齢者のおおよそ3分の1でAβPETで結果が陽性を示す。他方、陰性結果は、アルツハイマー病を基本的に除外できるという感受性は高いのでその臨床的有用性はおおいあるようだ。しかし検査結果が陰性の場合、その後の臨床管理の重要さの変化をもたらし、あるいはこうした変化によって患者や家族に健康面の本当の利益をもたらすかどうかについては不確かである」
雑誌掲載の論文に付随する「編者ノートEditor's Note」で、2010年から2012年まで「メディケア証拠向上・給付諮問委員会Medicare Evidence Development and Coverage Advisory Committee」の委員であったロバート・シュタインブルックRobert Steinbrook医師(写真左下)は次のように記述しています。
「CMSの提案は勇気があって革新的です。この提案によって、有意義な資料から何百万人のメディケアの被保険者の生活を改善する可能性をもった援助ができるからです」
そして彼は次のように結論づけています。
「こうした取り組みは公的な利益に提供することになります。CMSがAβPETの画像検査をアルツハイマー病やその他の神経退行性疾患に関して適切な証拠がないまま給付することは無責任です」
パールソン医師は研究に関して財政的利害関係はないと報告しています。
(Medscape January 15, 2014 Utility of Amyloid Imaging in Alzheimer's Still Uncertain)
論文:Amyloid-β Positron Emission Tomography in the Diagnostic Evaluation of Alzheimer Disease Summary of Primary Findings and Conclusions(JAMA Intern Med. 2014;174(1):133-134)
訳注:右のAβPETの画像で、左上は健康な人、左下はアルツハイマー病にならなかったMCIの人、右上はアルツハイマー病の人、右下はアルツハイマー病になったMCIの人のものである。
編者:わが国でも健康保険の給付になっていないAβPETは、最近「ねつ造か?」で話題となったJ-NDAIの研究で行われ、脳ドックで既に実施されているが、紹介記事にあるとおり画像検査結果の意義と解釈については注意したい。
(1月15日/アメリカ)
アルツハイマー病診断で「アミロイドベータ陽電子放出型断層撮影法Amyloid-βPositron Emission Tomography(AβPET)」の臨床上、有益であることを評価できるデータはとても少ないことが、新たな文献研究でわかりました。
ボストンにある「臨床・経済評価研究所Institute for Clinical and Economic Review」のスティーヴン・パールソンSteven D. Pearson医師(写真左上)が指導したこの研究の論文筆者は「AβPETの結果が陽性でもアルツハイマー病と診断できないばかりか、軽度認知障害MCIの進行の危険性について正確に予測するためことにも使えない」と記述しています。
脳の画像検査に関する現行の償還払いについての「Centers for Medicare and Medicare Services (CMS)(メディケア・メディケイドセンター)」の評価した資料も含めた今回の文献研究の論文がアメリカ医師会雑誌のJAMA Internal Medicineの2014年1月号に掲載されました。
2013年4月、「アメリカ政府食品医薬品局(FDA)」は、florbetapir F-18(イーライリリーEli LillyのアミヴィッドAmyvid)を使った脳のAβ 斑の蓄積を確認するAβPETを承認しました。この検査でアミロイド斑が認められない陰性結果は、認知機能 障害がアルツハイマー病による可能性は低いと示唆するとしました。しかし、Aβ 斑が認められた陽性の結果についてアルツハイマー病と診断できることが確立されたわけではありません。
2013年7月、同センターは、公的意見のための決定草案を発表し、9月27日、最終判断覚え書が公表しました。この最終決定でCMSは以下のとおり結論付けました。
「社会保障法Social Security Actによる給付されていない画像検査であるAβPETを実施することは疾患、あるいは外傷の診断や治療、あるいは認知症あるいは神経退行性疾患をもつ被保険者の機能の改善のために合理的でかつ必要性があると結論付けるだけの十分な証拠はない」
しかしながらCMSは、この画像検査を向上させる二つのプロセスがあるとも結論付けています。第一は、アルツハイマー病と前頭側頭型認知症FTDといった狭義の臨床的鑑別診断が困難な場合にアルツハイマー病を除外するために行われる場合。第二は、アルツハイマー病の治療および予防に関する臨床研究を成果あるものにするための場合です。このようにしてCMSは、ある種の基準を満たす臨床研究に参加する患者についてはAβPETを給付対象とすることになるでしょう。
したがって、アルツハイマー病のよりよい治療や予防の開発、臨床的に鑑別が困難な診断の解決を目的とする研究に限定されます。この種の臨床研究ではCMSの承認が必要で、研究に参加する人が相応しい集団からの者であり、比較実行可能で縦断的な研究であるべきです。また研究が適切であるということは、前向きで無作為で最終的に剖検による診断を行えるということです。さらに、研究に使われる放射性追跡物質はFDAが承認したものに限られます。CMSの覚え書には「これらに該当しないその他すべての場合は給付されない」と記載があります。
新たに発表された今回の文献研究の論文は、CMSの結論を支持するに有効な研究結果の概要を示しているのです。この文献の研究者は、診断面の正確さを評価した14のAβPET研究と、診断に関わる印象へのこの種の検査の影響を評価した1つの研究文を取り上げました。予測されたとおり、臨床的なAβPET画像検査では無作為の研究がありませんでした。
診断の正確さを評価した14の研究のうち、13は臨床診断あるいはアルツハイマー病の「究極基準」である剖検と画像検査の結果を比較してものです。生体組織検査の結果と比較したAβPET結果の感受性と特異性に関する重要な研究では、医師によって診断された51歳以上の死期が近い患者が対象となり、これらと若年で健康な対象者とが比較されています。この研究では、生体検査によると、すべての患者の66%がアルツハイマー病と診断されました。
個々の画像を解釈する複数の人たちによる研究では、分析の結果、AβPETの感受性中間値は92%、特異性は95%でした。しかしながら、その幅は感受性においては69から95%、特性においては90から100%でした。
診断に関するひとつの研究は、MCIから完全な認知症になる進行の可能性という予後について有益な情報が得られるかのAβPETの能力を評価しています。この研究では、AβPETの結果が陽性である場合、複数の認知機能がかなりの低下することと相関するとされています。MCIの高齢者のうち、AβPETが陽性だった人の29%は18か月以内に完全な認知症になり、陰性の結果だった人では10%が完全な認知症になりました。
しかしながら、今回の研究論文の筆者は、「資料からみると、Aβ PET陽性の人で認知機能の著しい低下が起こるのかどうか、また何時起こるのかを予測するには証拠が不十分である」と指摘しています。
検査結果が診断に与える影響に関する研究は一つだけです。この研究ではアルツハイマー病と疑われる229人について調べ、医師はAβPETの検査の前後に仮の診断を示し、また患者の管理計画も立てます。
AβPETの画像解釈は全事例の54.6%で診断の変化に相関しました。少なくとも事例の85%で、少なくとも決めた管理方針の一分野―例えば、コリンエステラーゼ阻害剤あるいはメマンチンの使用―が変更されました。
これまでのAβPETに関する少ない研究では、AβPETの検査結果が臨床面で管理や患者の状態を改善しているかどうかについては評価されていません。さらに研究者は、アルツハイマー病以外の認知症の患者また生活設計能力について画像検査で生じる利害についても評価がありません。
その他の生じうる問題として、利用可能な研究結果から臨床検査を行うことを検討するには、結果がすべて患者を代表してはいないということがあります。その理由は、これらの研究では、かなり研修を受けた医師やアルツハイマー病の可能性の高い患者が参加していることです。
パールソン医師らは、「AβPET検査の陽性の結果について臨床的有用性はまだ不確実である」と結論づけ、さらに以下の指摘をしています。
「もし検査するならば、認知機能が正常な高齢者のおおよそ3分の1でAβPETで結果が陽性を示す。他方、陰性結果は、アルツハイマー病を基本的に除外できるという感受性は高いのでその臨床的有用性はおおいあるようだ。しかし検査結果が陰性の場合、その後の臨床管理の重要さの変化をもたらし、あるいはこうした変化によって患者や家族に健康面の本当の利益をもたらすかどうかについては不確かである」
雑誌掲載の論文に付随する「編者ノートEditor's Note」で、2010年から2012年まで「メディケア証拠向上・給付諮問委員会Medicare Evidence Development and Coverage Advisory Committee」の委員であったロバート・シュタインブルックRobert Steinbrook医師(写真左下)は次のように記述しています。
「CMSの提案は勇気があって革新的です。この提案によって、有意義な資料から何百万人のメディケアの被保険者の生活を改善する可能性をもった援助ができるからです」
そして彼は次のように結論づけています。
「こうした取り組みは公的な利益に提供することになります。CMSがAβPETの画像検査をアルツハイマー病やその他の神経退行性疾患に関して適切な証拠がないまま給付することは無責任です」
パールソン医師は研究に関して財政的利害関係はないと報告しています。
(Medscape January 15, 2014 Utility of Amyloid Imaging in Alzheimer's Still Uncertain)
論文:Amyloid-β Positron Emission Tomography in the Diagnostic Evaluation of Alzheimer Disease Summary of Primary Findings and Conclusions(JAMA Intern Med. 2014;174(1):133-134)
訳注:右のAβPETの画像で、左上は健康な人、左下はアルツハイマー病にならなかったMCIの人、右上はアルツハイマー病の人、右下はアルツハイマー病になったMCIの人のものである。
編者:わが国でも健康保険の給付になっていないAβPETは、最近「ねつ造か?」で話題となったJ-NDAIの研究で行われ、脳ドックで既に実施されているが、紹介記事にあるとおり画像検査結果の意義と解釈については注意したい。
Posted by アルツハイマー病のアミロイド画像診断の有益性はまだ不確か at 2014年01月19日 15:37