2013年08月27日

高齢化時代 始まる悲劇

高齢化時代 始まる悲劇
作家 曽野綾子
高齢化時代 始まる悲劇
 安倍内閣は、一応順調にすべり出していると言われるが、私はただちに取りかからねぱならない、重大な課題が残されている、と思っている。
 原発問題もその一つだが、それよりある意味では、もっと確実に暗い未来が見えているからである。
 日本の人口が高齢化に向かっていることは既に警告されているが、団塊の世代(1947~49年生まれ)が、すでに一部は老齢に入りかけた。彼らが75歳以上になる2025年に高齢者人口は3625万人になる。一方総人口は減少するので高齢化率は上昇し、2035年の高齢化率は33.4%に達する。つまり3人に一人が高齢者になる。この高齢化率はさらに上昇し、2060年には39.9%になって、実に日本人の2.5人に一人は65歳以上の高齢者になる予想である。
 実を言うと、私はこうした統計をあまり信じていない。人生には想定外のことが起きるのが普通であって、人は人生で必ず何か思わぬ番狂わせに出逢う。
 しかし一応の原則を信用しないわけにもいかない。私自身は夫婦で3人の親と同居し、全員を自宅で見送った。しかし2.5人の成人で一人の高齢者をみることは、かなり困難なことである。
 数年前まで私は途上国のマンパワーを入れて、経済的行為の一環として日本の高齢者をみてもらえばいいと思っていた。しかし途上国の人口も、特にアジアにある国は減少しつつある。
 仮に日本が経済的繁栄を続けたとしても、そして十分な電力を確保し、介護の方途を機械化したとしても、世話をする人がなくなってしまうのが現実だ。
 私は恐ろしい社会現象の出現を、単に想像上の恐怖とは考えない。老人ホームの人々は、食事は与えられても、入浴や排泄の面倒をみる人がいなくなるだろう。町には棄民に近い孤独な高齢者が溢れ、道端に横たわり、死なないだけで生きているとはいえない状況で、彷徨い歩くようになるだろう。
 若者たちは老人の存在自体を悪と考えるか、あるいは自分たちの世代の発展を阻害するものとして敵視する。その結果個人的に高齢者を殺害するか、あるいは集団で老人ホームを襲撃したり、火を放って焼いたりするようになるかもしれない。
 一方で、老人は若い世代からますます自分の生が脅かされていると感じ、若い世代を憎み、自分たちがただ生き延びることだけを考えて、利己的な自衛に走るようになる。そこには一定の時期が来れば人は死ぬものだという人間らしい覚悟も哲学も、存在のかげを潜める。
 2035年は決して遠い先ではない。私にとって二十数年前から今までの年月は、ほんの数年のように感じられるほどだ。
 悲劇の開始まで時間的余裕はない。人に優しいという言葉を掲げ、長寿を目標とした社会構造には、大なたをふるわなければならない。安倍内閣は、この推測可能な悪夢に、ただちに手をうたなければ手遅れになる。
(その あやこ)
産経新聞 2013年8月25日


特養「要介護3」から 厚労省 入所基準を厳格化へ
高齢化時代 始まる悲劇
 厚生労働省は25日、特別養護老人ホームの入所基準を厳しくする方針を固めた。入所できるのは原則として、手厚い介護が必要で自宅では負担が重い「要介護3」以上の高齢者からとする方向だ。要介護度の低い人は在宅へ、という流れを進め、制度維持のため給付費を抑制するのが狙い。介護保険法を改正、平成27年度からの実施を目指す。

 28日に再開する社会保障審議会の介護保険部会で議論を本格化させる。
高齢化時代 始まる悲劇
 社会保障制度改革国民会議の報告書は、特養の入所者について「中重度者に重点化」と明記。改革の工程を示すプログラム法案の骨子でも、26年の通常国会に介護保険法改正案を提出し、27年度をめどに実施していくとした。

 厚労省は報告書を踏まえ、特養に入所できる高齢者を要介護3以上の中重度者とし、比較的軽度の要介護1、2の高齢者は新規入所を制限する。

 要介護1、2の高齢者が特養を利用する理由として「介護者不在、介護困難、住居問題」が大きいとする調査結果もある。このため厚労省は自宅がない要介護1、2の高齢者向けには空き家などを活用して住まいを確保、買い物や食事などの生活支援も合わせて行う仕組み作りを進める。

 厚労省によると、25年4月審査分の1人当たりの介護サービス費用は、在宅が約12万円に対し特養の利用者は約28万円。

 23年度の特養の新規入所者14万人中、要介護3~5が約12万人と9割近くで、要介護1、2は1万6千人だった。
産経新聞 2013年8月26日
http://sankei.jp.msn.com/life/news/130826/trd13082610450011-n1.htm



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Posted by suiso at 11:17
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