NHKスペシャル『認知症をくい止めろ~ここまで来た!世界の最前線~』

suiso

2014年07月20日 16:54

"認知症800万人"時代
認知症をくい止めろ~ここまで来た!世界の最前線~

前回1月19日放送のNHKスペシャル『アルツハイマー病をくい止めろ!』では、発症の25年前から脳細胞に異変が起き始めることが紹介されました。もうひとつ重要なことは、アルツハイマー病の進行を抑える薬はあっても治す薬はないということでした。米国研究製薬工業協会(PhRMA)の2013年の研究開発報告書によると、アルツハイマー病についてのアメリカでの開発中の薬は94種類あります。1998年から2011年までに101件の薬が開発され失敗におわりました。

医療・介護・予防・認知症世界最前線
出演はアナウンサー・上田早苗、落語家・桂文枝。
認知症のうち、7割がアルツハイマー病患者。
アルツハイマー病は、発症25年前から原因物質・アミロイドβが脳に蓄積していく。
脳の記憶を司る部分・海馬も収縮していき、発症5年前から軽い物忘れが始まる。
ここが「予備群」。

発症後は体の機能も落ち、介護が必要になる。
いま、予備群から発症初期に効果のある薬の研究が進んでいる。
また番組では、世界が注目する介護技術、誰にでもできる予防法も紹介。

今年2月、日本でアルツハイマー病をくい止める薬が発見された。
淡路島で行われた調査で、脳梗塞の再発を防ぐ薬「シロスタゾール」を服用する人たちは、アルツハイマー病の進行が遅いことが判明。
服用しない人に比べ、1年後の認知機能の低下が8割抑制される。
アルツハイマー病と診断されて5年の生田佐代子も、「シロスタゾール」を服用している。

5年前の認知機能検査は30点満点中23点だったが、今年の検査でも23点のままだった。
生田の主治医・洲本伊月病院院長・岡田雅博は“予想以上に効いているデータだ”と話した。
淡路島の映像。
生田佐代子の夫・惠一のコメント。
語り・中條誠子。

国立循環器病研究センター・神経内科医長・猪原匡史が、マウスに「シロスタゾール」を与えたところ、脳内のアルツハイマー病原因物質・アミロイドβが減少したことがわかった。

アミロイドβは、神経細胞が働くと発生する老廃物。
通常は血液で排出されるが、量が多すぎると血管の壁の中に溜まり始める。
そうすると血管が切れて神経細胞が死滅、認知症が悪化する。
「シロスタゾール」は血管の筋肉を刺激して動かし、溜まっていたアミロイドβを取り除いたのだ。
猪原は“認知症制圧の糸口になる”と述べた。

米国では、糖尿病薬「インスリン」が注目されている。
最近になり、アルツハイマー病は「脳の糖尿病」とも言える状態にあることがわかってきた。
脳の細胞が糖分を取り込めなくなると、脳全体がエネルギー不足になり、アルツハイマー病を発症する。





米国で「インスリン」を直接脳へ届ける治療法の試験をしたところ、投与すると脳の糖分を取り込めなくなっている部分が消えていた。
多く投与するほど、認知機能の低下が抑えられていた。
新薬ではなく、既存の薬でくい止める新戦略が、世界の潮流となっている。
米国・ワシントン大学、ウェイクフォレスト大学の映像。
九州大学・主体防御医学研究所教授・中別府雄作、ウェイクフォレスト大学教授・スザンヌクラフトのコメント。

ゲストはジャズシンガー・綾戸智恵、介護福祉士・和田行男。
解説は国立循環器病研究センター・猪原匡史、群馬大学教授・日本認知症学会副理事・山口晴保。
猪原は“アルツハイマー病の臨床試験で、有効性なしの薬は100種以上。



新薬なら、開発に15~20年必要。
既存の薬は、副作用がある程度わかっていて非常に安全性が高い。
そのため臨床試験期間が短い。
早くて2020年。


最新の脳科学の知見を手がかりにしたこれらの方法を、認知症人口の爆発直前の今、広めることができれば、破綻も回避可能との見方も出始めている。番組では、日米欧のホットな対策の現場を緊急報告。スタジオではそれをもとに、認知症の進行度合いに応じて、私たち自身、そして日本の医療・介護の現場が、今すぐに出来ることは何かについて、徹底的に議論してゆく。

新薬も既存薬も使い進行を予防する、新時代に突入した”、山口は“嗅神経が頭蓋骨の穴に通っていて、インスリンを鼻から吸引すると、そこから脳に吸収される”とコメント。

ヨーロッパを中心に活動している認知症ケアの専門家・イヴジネストらは、ケアの方法「ユマニチュード」を開発。
認知症患者に対し人間らしく接することで、暴力などの行動心理症状を和らげることができるという。
ジネストは、日本の介護現場を回って「ユマニチュード」を伝えている。
アルツハイマー型認知症の花塚綾子は、突然怒り出したりとコミュニケーションをとるのが困難だった。
ジネストが「ユマニチュード」で腕のリハビリを行うと、花塚には笑顔も出た。
大切なのは、見つめる、話しかける、触れる、寝たきりにしない、の4つ。
栃木・宇都宮の映像。
花塚綾子の長男・敏彦のコメント。

認知症と診断され12年の岡四平は、2年前に足を骨折してから寝たきりの状態だった。
ジネストが岡に「ユマニチュード」を行う。
まず、正面から笑顔で見つめる。
認知症患者は視界の中心にいる人しか認識できない場合があるためだ。
触れるときは、「つかむ」のではなく「支える」。
お世話のときには、実況中継をするように話しかけ続ける。
認知症患者は、何をされているのかすぐ忘れてしまうためだ。
ジネストが来て20分後、岡は2年ぶりに歩いた。
ジネストは“「あなたは人間だ」と伝え続けるのが、ユマニチュードの哲学。
この方法で、本人だけでなくケアに関わるすべての人が、ともに穏やかに過ごせる”と話す。

認知症の症状が進んだ人にも、さまざまな認知能力は残されている。
顔の認識は苦手だが、顔の表情を見て感情を読み取ることはできる。
声から感情を読み取る力も残っている。
国立長寿医療研究センター・脳機能診断研究室室長・中村昭範は“顔の表情や視線など、コミュニケーションシグナルに注目し、これを積極的に介護に使うことで、心の通い合う介護が実現できる”と話す。

久万辰雄は、肺炎での入院がきっかけで認知症が悪化。
このままでは寝たきりにならないかと心配されている。
イヴジネストが久万に「ユマニチュード」を行った。
久万の妻・かね子は、ジネストから「ユマニチュード」を教わり、退院後に家庭でも実行。
2か月、自宅でリハビリに励む久万の姿があった。
久万は、会話をする力や笑顔も取り戻した。
東京・調布の映像。
久万辰雄、妻・かね子のコメント。

介護福祉士・和田行男は“ユマニチュードは、体系化はされていないが、日本の介護現場では普通に見られる”とコメント。
東京医療センター・本田美和子が、スタジオでユマニチュードを実戦。
本田は“大切なのは、びっくりさせないこと。
近づくときは、まず本人を追い越して、目を合わせながら近づく。
にっこりしながら話しかけ、触れたりもしながら、常に「自分がここにいる」と伝え続ける。
知覚、感情、言語を同時に使う”と説明。

介護現場を悩ます、暴力などの行動心理症状はどうして起きるのか。
ワシントン大学教授・エラインペスキンドは、その原因がストレスホルモンにあると話す。
アルツハイマー病患者を調べたところ、ストレスホルモンが多いほど行動心理症状が頻繁に起きることがわかった。

さらに、アルツハイマー病だとストレスホルモンが通常より多くなりやすいという。
脳の海馬は、記憶を司るだけでなくストレスを抑える役割も持っている。
アルツハイマー病になると海馬が萎縮し、ストレスホルモンを減らすブレーキの機能が弱まってしまう。
そのためストレスホルモンが過剰になり、脳が興奮状態になる。
米国・シアトル、ワシントン大学の映像。
エラインペスキンドのコメント。

アズサパシフィック大学准教授・リンウッズは、介護の力でストレスホルモンを抑える方法を研究している。
まずアルツハイマー病患者に優しく触れるケアを行い、その後唾液に含まれるストレスホルモンの量を計測。
その結果、触れるケアをした人たちのグループは、ストレスホルモン量が減っていたことがわかった。

優しく触れられると、その信号が脳に伝わり“心地よい”と感じる。
脳は気分を安定させるホルモンを出し、脳の興奮が収まる。
その結果ストレスホルモンの分泌が減って、行動心理症状がおさまる。
リンは“深い思いやりを持ってケアすれば、介護者が薬代わりになる”と話す。
米国・ロサンゼルスの映像。

浜松医科大学教授・鈴木みずえらは、認知症専門施設で、週5回入居者に優しく触れるケアを6週間続け、行動がどう変化するかを研究。
攻撃的言動や徘徊が続いていた男性入居者は、このケアが始まって30分で穏やかな表情になり、しばらく徘徊が収まったという。
研究の結果、7割以上の人で攻撃性の低下が見られた。
鈴木は“触れることで、認知症のかたたちが人間らしい生活を維持できる。
人として社会の中で共存できる”と話す。
静岡・浜松の映像。


本田美和子は“医師や看護師は、病院にいる人は病気を治したくていると信じている。
しかし認知機能が落ちてくると、入院している理由などがわからなくなる。
そうすると、おかしいと思いつつ「抑制」せざるを得ない”、和田行男は“施設では、優先順位として何を大事にするか、組みなおしが必要。
人として向き合っていくことを優先する流れに変えていかないと。
よいことは普及してほしいが、マニュアル化が怖い”とコメント。
和田の話を受け、本田は“手順があっても、現場ではそこから逸脱したことが起きる。
バックグランドまで戻って解決法を目指す。
人手不足が問題になっているが、ユマニチュードで介護時間も短縮できる”とコメント。


厚生労働省の研究によると、認知症の人と予備群は、65歳以上の4人に1人だという。
米国の予想では、2050年のアルツハイマー病患者数は、いまの3倍になるとされる。
もし発症を5年遅くできれば、認知症にならず生涯を終える人が増える。

町の調査では、65歳以上のアルツハイマー病患者は、1992年は1.8%だったが、2012年は12.3%に急増。

糖尿病患者は、アルツハイマー病発症の危険が2倍近く高いことがわかった。

また喫煙習慣のある人は、危険性が3倍近くに。

一方、運動習慣のある人は発症の危険性が4割減ることが判明。

九州大学・環境医学教授・清原裕は“アルツハイマー病も生活習慣病と考えられる。
予防も可能だと取り組めば、対策も出てくる”と話す。

認知症危険度を上げるものは、糖尿病、高血糖、高血圧、肥満。
脳卒中や心臓病の原因と同じ。
下げるものは、運動、減塩、禁煙。
山口晴保は“体に多く酸素を取り込む運動が良い。
リラックスしてできる運動を”、猪原匡史は“下げるものを全部実践すると、3~4割は認知症が減る”と説明。
綾戸智恵は“昔と今の24時間は違う。
何でも自動化し、体を動かさない”とコメント。

去年、英国・ケンブリッジ大学教授・キャロルブレインのチームが、英国国内で認知症患者が減少していると発表。
特に急激に増加する80歳以降で、23%減少しているという。
キャロルは“脳卒中や心臓病の予防対策が、認知症の減少に大きく関係している”と話す。

英国では、脳卒中と心臓病への対策を行い、死亡率をともに10年で40%減少させた。
英国では、医師が患者の健康を維持すると、医師にポイントがつく制度が10年前にスタート。
ポイントによる医師の収入は、多い人で15%に及ぶ。
英国・ケンブリッジの映像。


英国では、喫煙者を減らすためにタバコの自動販売機を撤去し、売り場での陳列も禁止している。
また、高血圧を引き起こす塩分摂取量を、1日6g以下に下げるため、85の食品に対して目標塩分量を設定。
大手スーパーや食品加工メーカー、外食産業と一体となり減塩を進めている。
生活習慣病対策に社会全体の仕組みで挑むことで、認知症も減らした。
イングランド公衆衛生局・認知症担当・チャールズアレシは“英国では、GDPの1%を認知症対策に費やしている。

発症を5年遅らせれば、患者は半減する。
費用削減効果も絶大だが、1人1人の人生にとっても大きな意味を持つ”と話す。


群馬大学教授・日本認知症学会副理事長・山口晴保は“日本の場合、予防は市区町村の事業、医療は病気を治す、と機能が分かれている。
英国は予防と医療を一本化していて、国立循環器病研究センター病院の猪原匡史医長は“英国は、心臓に良いことは脳にも良いと考える。
共通の病気という認識。
日本では、認知症と心臓病の研究者間に少し隔たりがある”と説明。

日本では、認知症と心臓病の研究者間に少し隔たりがある”と説明。
“英国のように予防の出来高制度にはできないか”、との質問に対し、山口は“薬を使わず健康維持するほど、医師に収入が入るようなシステムが必要”、和田行男は“介護保険では、要支援度が軽いと報酬が少ない。

一番大事なところに資源を投入しないと”と話す。



【関連記事】
NHKスペシャル『認知症をくい止めろ~ここまで来た!世界の最前線~』
アルツハイマー病研究の国家プロジェクトでデータ操作
認知症「はいかい」で行方不明1万人
認知症を生きる:週刊東洋経済2014年3月8日号
ハウステンボス認知症セミナー「認知症の予防と改善」
ハウステンボス認知症セミナー
【水素】市場規模、200億円の大台に到達!
アミロイドβの蓄積が認知症の原因とは限らない
認知症:家族が発症気付かない「早期」でも行方不明に
第9回 認知症サプリメント研究会
NHKスペシャル:アルツハイマー病をくい止めろ!
「認知症800万人時代」この国に何が起きるのか
認知症800万人の時代に希望の光
健康・医療戦略・ 考え方まとめる
ロンドンでG8認知症サミット共同声明発表
水素水とサビない身体:・ 悪玉活性酸素は消せるのか
ヤマイモ成分がアルツハイマー病に効果
アルツハイマー病に驚くべき改善効果
G8サミットで初めて認知症がテーマに
「認知症コスト」10年間で1000万円という現実
大流行「水素水」でセックスレス解消!(週刊文春)
アルツハイマー、及びレビー小体認知症患者の認知機能改善作用としてのTSH1サプリメント
アルツハイマーは「第三の糖尿病」
水素によって認知症を予防できるか?
カレーでボケ予防!カスペ!・間違いだらけの健康ジョーシキ
65歳以上の高齢者における認知症は15%、462万人

関連記事