2012年10月11日

大流行「水素水」でセックスレス解消!(週刊文春)

大流行「水素水」でセックスレス解消!(週刊文春)
ジャーナリスト藤吉雅春

半身不随状態のマウスに飲ませたら元気になった-奇跡的な研究結果が世界的に注目され、いまや美肌や若返り効果で一大ブームの水素水。これが性のアンチエイジングにも効くと密かに語られている。抗老化に革新をもたらすかも知れない元素の謎に迫る最終回!

 まさに”想定外”といえる事態が起きている。
 水素ブームをご存知だろうか。9月に『はなまるマーケット』(TBS系)が美肌や若返り効果があるとして「水素水」を取り上げるや、大反響が起こった。
 大手飲料メーカー「伊藤園」はこう言う。
 「通販で水素水の発注が毎月平均3000ケースあるのですが、放送から2日間で3000ケースの注文がきて、通販用ホームページがパンクしました」
 九州のメーカー「KIYORAきくち」も、「生産が追いつきません。最近、工場を新設して生産量を五倍に上げたばかりなんです」と嬉しい悲鳴を上げる。
 女性誌でも何度も特集が組まれる「水素商品」だが、次のような話はまったく報じられていない。
 「水素の入浴剤をお風呂に入れ始めたら、奥さんが風呂上がりに胸をはだけるようになり、長年、セックスレスだったのに、急にムラムラして始まった」とか、70代の元官僚が「俺はEDにならない」と豪語し、「俺が現役でいられる秘訣は、水素水」と言い出したり。研究者たちの間では、「60代、70代の人が勃つようになったという話をしていて、みんな”水素”が手放せないと言っている」と話題で、”裏のテーマ”と言われている。
 後述するが、水素製品を服用してセックス観そのものが変わった中高年もいる。美肌などアンチエイジングを謳う商品が、裏では「性の復活」を密かに語られているのだ。
 もともと水素の医学的効果を世界に知らしめたのは、細胞生物学の権威、日本医科大学大学院の太田成男教授である。2007年、太田教授ら研究グループの論文が、世界的な医学誌『Nature Medicine』に掲載された。以来、国内では40の大学や研究所が研究を始め、現在では250報もの論文が発表されている。
 水素が導き出す様々な研究結果は、”奇跡”としか言いようがない。先駆者である太田教授本人が、「何かの間違いか」と思うことは何度もあったという。
 「半身不随状態のマウスに水素水を飲ませると、マウスが元気になった。嘘だと思い、研究生に実験をやり直すよう指示しました。すると、また同じデータが出る。また失敗したのかと思って調べると、間違っていないんです。
 遺伝的に動脈硬化になりやすいマウスに、半年間水素水を与えると、水素水を飲ませないマウスと明らかに差が出た。これも、最初は間違いかと思いました」

認知症、メタボ、痛風にも
 ピッツバーグ大学でも、同様の出来事があった。マウスの臓器移植を行う時、免疫抑制剤を使わなければ、8割以上が免疫抗体で拒絶反応が出て死ぬ。ところが、水素水を飲ませると七割が生き残った。研究していた教授は、部下がデータを捏造したと疑い、ダブルブラインド・テスト(二重盲検試験)を行うと、やはり同じ結果が出たのだ。
 太田教授が言う。
 「認知症の実験で、マウスを狭い所に押し込めてストレスを与えると、マウスは頭が惚けます。しかし、水素水を与えると、そうはならない。また、脂肪代謝にも効果があり、メタボにならない。水素摂取の方法は、水素ガスの吸入、水素水、点滴など、いろんな方法を試しています」
 生活習慣病への効果は画期的である。食欲を自分で調節できずに食べ続けるマウスに、水素を吸入させると、食欲を調節して体脂肪が下がり、血糖値、インスリン、中性脂肪を改善。
 他にも、打ち身によるアザやシミが消えた例がある。太田教授の顔写真を見ると、54歳の時にあったシミがなくなり、60歳の写真の方が皺もなく、若く見える。
 「痛風の学生の尿酸値を毎日測定していて、酒を飲んだ後はグッと数値が上がるのに、2リットルの水素水を飲ませると尿酸値が下がりますね」(太田教授)
 筑波大学大学院の人間総合科学研究科スポーツ医学専攻・宮川俊平教授は、疲労と水素の関係を実験した。3ヵ月間、蹴球部の10人の学生に、練習前日の夜に500ml、朝起きた直後に500ml、朝の練習の直前に500mlの計1.5リットルの水素水を摂取させ、運動後に検査をする実験である。宮川教授が言う。
 「練習ではバイクマシンによる自転車こぎの後に、座った姿勢で足首に負荷をかけて膝を伸ばし、大腿四頭筋(膝を仲ばす筋肉)を鍛える運動を百回やってもらいました。
 その結果、水素水を飲んだ学生の方が、ただの水を飲んでいた学生よりも乳酸の上昇が抑えられていたのです。学生は何を飲んでいるかわからないダブルブラインド方式です。
 また、筋電図を周波数解析したところ、大腿四頭筋の筋疲労が抑えられた結果も出ました」

便乗インチキ商品に注意
 水素を摂取した人に多い「疲れが取れた」という感想が、実証されたのだ。
 では、なぜ水素によって、こうした様々な現象が起きるのか。太田教授がメカニズムを解説する。
 「水素が体にいい理由の一つは、活性酸素の害がなくなるからです。活性酸素は身体の細胞内にあり、細胞にダメージを与えている。これがなくなり、細胞の代謝がよくなるのです」
 普通、呼吸した酸素の約1~2%から、副次的に活性酸素が生み出される。この作用により、人間は1日10万ヵ所のDNAが自然に壊れる。が、ほぼ同数が再生される。活性酸素の中で、「ヒドロキシルラジカル」という成分が、「悪玉」といわれ、人間を酸化、つまり老化させる。水素はこの悪玉だけを選んで、化学反応で消滅させるのだ。
 「今、研究者たちの間で言われているのは、期待以上の効果がありすぎることです。なぜこんなに効果があるのか不思議で、まだまだ解明すべきことはたくさんあります」(同前)
 ただ、「水素水」に人気が殺到しているものの、水に取り入れられる水素量は限度がある。1日に飲める水の量も、2リットルがせいぜいだ。厄介な問題が、奇跡の効果に便乗したインチキ商品やマルチ商法まがいが実に多いことだ。
 「僕の名前や顔写真を勝手に使って販売しているケースがあり、内容証明を出しました」(同前)
 以前、国会で話題となった「なんとか還元水」を始め、水素が入っていない水素水もある。水素はペットボトルの容器を透過するので、ペットボトル商品はインチキだと思った方がいい。薬事法により効果効能は謳えないのに、「がんが消えた」と銘打つ商品も怪しい。現在、消費者庁が水素の認定を視野に検討を開始しているという。
 水素水とは別に、鼻からの吸入や点滴などによって、より濃度の高い水素を体に取り込む方が効果的だろう。都内にある「水素館」には吸入器材やカプセルが揃えてある。水素館で鼻にチューブを入れて吸入をすることができる。また、同様の処方を行うクリニックもある。
 では、水素は人間の性機能にどんな影響を与えているのだろうか。
 「体験した人にしかわからないから、僕の話は信じられないかもしれません」と切り出したのは、北海道で工業関係の会社の役員を務めるS氏(64)だ。
 ホテルのラウンジに現れたS氏は、メガネをかけた温厚そうな男性で、見た目は50代に見える。どこにでもいそうな物腰柔らかな男性だが、彼は25年間、セックスどころか勃起と無縁の人生を送ってきた。
 S氏の病名が判明したのは、32歳の時だった。
 「当時、アドベンチャースキーでよく高い所からジャンプをしていたのですが、背骨をケガして、3ヵ月入院することになりました。退院後、腰の痺れは治ったのに、足の痺れが治らない。僕の後輩の循環器系の医師が『先輩、ドップラー検査をやってみましょう』と足首の脈を計る検査を勧めてくれました。すると、『先輩、大変なことです!』と言いだしたのです」
 S氏は国から難病に指定されている「バージャー病(閉塞性血栓性血管炎)」と判明した。日本に約8000人の患者がいるこの病気は、喫煙者やストレスの多い者が罹りやすく、末梢の動脈が細くなっていき、血管が詰まり、動脈の壊死を引き起こすものだ。
「膝から下を切り落とすこともあれば、人工血管のバイパス手術もある。僕の場合は、血液をサラサラにする薬を服用し続ける生活になりました。動脈の病気ですから、朝勃ちどころか、勃起なんて、どちら様のお話ですかって感じでした」
 32歳で人生から性機能が奪われると、夫婦生活はもちろん、男同士の会話についていけなくなった。

目覚めたら25年ぶりの朝勃ち
「飲み会で仲間がエッチな話とか女性の話題をすると、話の輪に入れません。それでも仲間が盛り上がっていると、僕は『なんだ、お前ら。俺に対する嫌味かよ』と、話題を変えさせることもありました」
 難病を抱えながら25年がたった2005年、S氏は水素サプリを知った。
 「自分なりに調べると、アメリカのパトリック・フラナガン博士は水素で活性酸素を除去できると言っていました。それで自分でも飲み始めたら、『えー、嘘だろ!』ということが起きたのです」
 目が覚めたら、25年ぶりに朝勃ちしていたのだ。以来、今でも週に2、3回は朝勃ちするという。
 「ストレスを抱えている人ほど、体感するのが早い印象があります。誤解を与えぬよう言いますけど、持続性はありません。ただ、夫婦生活が蘇るだけでなく、精神的にも夫婦関係がよくなる。もちろん健康的にもです」
 同じく糖尿病などで弱まっていた高齢者に、水素で性が蘇るケースが多い。
 獨協医科大学の名誉教授で、赤坂AAクリニックの森吉臣院長はこう話す。
 「水素の作用によって、血管の内皮細胞から一酸化窒素が出やすくなって勃起しやすくなるんです。バイアグラほど強くありませんが、動脈を拡張するので血流がよくなり老化にブレーキをかけることにもなる。
 それに、セックスは脳がコントロールしているので、脳が若くないといけない。水素はその脳内の血流をよくしたり、脳内ホルモンを増やすので機能がアップする。何よりも水素は血管がなくても脳のすみずみまで行き渡る。これが大きいんです」
 神奈川県で保育園を経営する黒澤浩一氏(59)は、この連載で取り上げてきた。性とアンチエイジング”の様々な要素を、水素によって獲得した人物といえるだろう。
 黒澤氏が胃がんによって胃の全てと、十二指腸の3分の2を摘出したのは、52歳の時だった。
 「先生、私は何年生きられるんですか?」
 医師にそう問うと、「キミ次第だ」と言われた。そして、あと5年生存できる確率が50%だと告げられた。「肉体的ダメージだけでなく、精神的なショックが大きかった」という黒澤氏にとってさらに苦痛だったのは、術後から始まった抗がん剤治療である。
 洗面台の歯ブラシの横に、抗がん剤を置き、朝昼晩に10錠ずつ服用しなければならない。鏡に映った顔は、目の下が黒く、皮膚には張りがなく、黒ずんでいる。放射線治療を受けた後は、食事をしていなくても吐き気をもよおし、頭痛と目眩に悩まされた。
 もともとイタリアンレストランを経営し、自ら厨房に立っていた黒澤氏にとってショックだったのは、体力、気力と同時に、味覚をなくしたことだ。
 「抗がん剤で抑えられてしまったのか、食材をロにした時の触感しかわからない。匂いも味覚もない。これは致命的で、納得のいく仕事ができなくなりました。自分が自分ではない状態を死ぬまで続けることに耐えきれず、医師に抗がん剤治療をやめると言いました。猛反対されましたが、押し切ったのが、手術から3年目のことです」
 インターネットで様々なサプリを取り寄せては飲む生活を続けていた時、彼は水素サプリを知る。知人の薦めで、通常は1日2カプセルを10カプセル摂取した。その3ヵ月後のことだ。
 朝、布団の隣で妻が、「どうしたの?」と目を覚ました。黒澤氏は驚いた顔をしたまま、「見てくれ」とその場でパンツを降ろした。まるで青年時代のような朝勃ちをしていたのだ。
 「がんになって以来、3年近く夫婦の営みはありませんでした。そもそも性欲自体がないし、朝勃ちなど当然ありません。朝はいつも気だるく、目が覚めても布団の中から這い出せない。ところが、その日の朝は目覚めがいいんです」
 試しに彼はそのまま妻と久しぶりに体を重ねた。二人ともただただ驚くばかりで、生き返ったように心が躍ったという。

「生きている実感を感じる」
 異変は続いた。歩くスピードが自然と速まっている。懐かしい躍動感が体に蘇った気がした。また、がんを患って以来、夜中に最低一度はトイレに立っていたのに、それがなくなった。連載一回目で紹介したように、就寝中に3回以上トイレに行く人は動脈硬化の前兆である。膀胱の筋肉に血液が行き渡らないため、尿を溜められず頻尿になり、EDにもなる。また、「今まで起床は遅めだったのに、朝5時半に目が覚めるようになり、まずトイレに行きます。バナナのような一本が出て、腰がすっきりする爽快感があるんです。便秘気味だったのが快便になりました」
 これも東洋医学の古典『黄帝内経』の体内時計の回で紹介した、「臓器の当番時間」の「大腸系」の時間に当たる。午前5時は排泄タイムだ。西洋医学でいうホルモン分泌を促す「脳の時計遺伝子」の通りに体が動くということは、健康の証だろう。
 また、排泄の爽快感は、「整体」の回で紹介した。爽快感がない排泄は、陰部神経と括約筋の衰えであり、EDやオーガズム障害の兆しだ。
 様々な性のアンチェイジング要素が体に現れた黒澤氏の性生活は、根底から変わった。朝勃ちだけでなく、それからというもの週2回の夫婦の営みが続く。平均1時間ほどだ。しかし、回数が重要なのではない。黒澤氏が言う。
 「オスが求めるような20代の性交ではなく、すごく自然な形でお互いを愛し合えるようになりました。二人でおいしいものを食べに行って感動したり、旅行先の風景を見て感動したりするような、お互いが一緒に心を躍らせるように、自然な形で性に結びついていく。生きている実感を感じる、二人にとって重要なものとなったんです」
 今年のゴールデンウィーク、二人はハワイで10日間過ごした。毎日、二人は愛し合ったという。旅先での楽しさがそうさせたのか、1日に2度も愛し合える姿に、お互い呆れながら、がんを境にどんどん健康になっていることに気づいた。
 黒澤氏はこう話す。
 「100歳まで生きようなんて思いません。今、やりたいことがあるので、燃焼できればいい。やりたいことがあれば、引退はありません。社会の一員として役に立ちたいことがあるから、日々、生きるんです」
 まだ未知数の水素だが、マウス実験で平均寿命が延びることがわかっている。
 人間の最大寿命は、遺伝子プログラム説では120歳。水素で細胞が元気になっていけば、生きる意欲に体が伴っていくかもしれない。限界年齢に多くの人が近づける時代が来た時、高齢者の性に何をもたらすだろうか。心の充実の象徴にもなれば、諍いのもとにもなる。水素は人間社会に想定外の変化をもたらすかもしれない。

週刊文春2012年10月11日号



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Posted by suiso at 11:41
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