アミロイドβの蓄積が認知症の原因とは限らない

suiso

2014年02月05日 21:14

 しかし、最初に述べた「老人班は健常者にも存在する」という現実を多くの研究者は見落としてきました。そして、ここ数年、全世界の有力な製薬会社は巨額の研究費を投じて、このアミロイド仮説に基づいた治療薬やワクチンの開発、臨床試験を行いました。全世界のアルツハイマー病研究者はきっと素晴らしい成果が報告されるだろうと期待しましたが、2008年に米国シカゴで開催されたアルツハイマー病国際会議の場で、ショッキングな報告がなされたのです。
 それは臨床試験の失敗でした。アミロイド仮説に基づいて、「βたんぱくのワクチンを作って投与することで、アミロイドを減らす」といういわゆるワクチン療法が注目されましたが、数年前にアメリカで行なわれた臨床実験では、亡くなったアルツハイマー病患者の脳を見ると、「確かにアミロイドの量は減ったものの、肝心の認知機能の回復は見られなかった」という結果が出たのです。
 私もその会議に出席し、多くの研究者がショックを受けている様子を目撃しました。それ以来、アルツハイマー病の「アミロイド仮説」がら揺らぎだしたのです。
 このように、多くのアルツハイマー病意外の研究者や知識人たちが、「アルツハイマー病の不可思議、アミロイド仮説」と呼ぶように、アルツハイマー病研究者はこの失敗に基づいて、アミロイド療法は治療には向かない、予防に期待するという方向転換をしています。

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アミロイドβの蓄積を確認する画像診断について、アメリカ医師会雑誌のJAMA Internal Medicineの2014年1月号に論文が掲載されました。それによると「AβPET検査の陽性の結果について臨床的有用性はまだ不確実である」と結論づけています。
(Medscape January 15, 2014 Utility of Amyloid Imaging in Alzheimer's Still Uncertain)
論文:Amyloid-β Positron Emission Tomography in the Diagnostic Evaluation of Alzheimer Disease Summary of Primary Findings and Conclusions(JAMA Intern Med. 2014;174(1):133-134)

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