認知症:家族が発症気付かない「早期」でも行方不明に
認知症:家族が発症気付かない「早期」でも行方不明に
毎日新聞 2014年02月04日 06時47分
認知症やその疑いで行方不明となり死亡または見つからない人が2012年だけで500人を超えていたが、まだ症状が進んでいない段階でも行方不明になるケースがあることが分かった。北海道釧路地域での民間団体などによる調査では、家族が認知症の発症に気付いていなかった「発症早期段階」が約2割に上った。専門家は「ごく初期は、そばにいる人ほど変化に気付きにくく、本人にも言いにくい。少しでも異変に気づいたら周りの人に相談を」と話している。【銭場裕司】
◇「ちょっと行ってくる」…9キロ離れた側溝に遺体
大阪市浪速区の村上定男さん(当時84歳)は12年1月30日夕、自宅から800メートルほど離れた郵便局から、近くの旧宅にある鉢植えの水やりに向かった。「ちょっと行ってくる」。自転車に乗る姿はいつも通りで、妻喜美子さん(83)は異変を感じなかった。だが、定男さんはそのまま帰って来なかった。
1週間後の2月6日、9キロほど離れた同市平野区の堤防近くの側溝で、付近の住民が定男さんの遺体を見つけた。そばには自転車が倒れていた。道に迷った末に力尽きたとみられ、凍死だった。真冬の風を避けようとしたのか、幅30センチほどの溝に体を埋めるように横たえていたという。喜美子さんは「どんな気持ちで自転車で走っていたのか。正常な状態やなかったんでしょう」と夫に思いをはせる。
行方不明になる1,2カ月前から、定男さんは食事したことを忘れる日があった。温浴施設で鍵をなくしたことや、道に迷ったのかなかなか家に帰って来られないことも。喜美子さんが病院に行くよう勧めたが、応じずそのままになっていた。喜美子さんは「当時は認知症のことが頭に浮かばず、どの病院に連れて行けばいいかも分からなかった」と語る。
認知症の人は前へ前へと行ってしまい、自転車で戻れなくなることもあるので気を付けた方がいい--。喜美子さんが自分のかかりつけ医からそう聞いたのは、夫を失った後だ。「本人に病気の自覚はなかった。早く受診させて、もっと気を付けるべきでした」と悔やむ気持ちが日々募る。食卓を囲む相手がいなくなり、料理する気もなくなった。「夕方になるとものすごく寂しい。もう一人ですから」。喜美子さんは一度も泣くことすらできずにいる。
◇03年の釧路の調査 「早期」が2割超
03年までの10年間に北海道釧路地域で捜索対象となった行方不明事案のうち、本人の症状や家族の認識を把握できた129件を民間団体などが調べたところ、家族が認知症の発症に気付いていなかった「発症早期段階」が20.2%あった。日常的に症状が出て家族が気付きつつも行方不明になるとは考えていなかった「発症期」も43.4%に上った。
調査したのは民間団体「釧路地区障害老人を支える会」(たんぽぽの会)と、公設民営の「認知症介護研究・研修東京センター」の永田久美子・研究部長。
永田さんは「ごく初期はそばにいる人ほど変化に気付きにくい。家族が症状を指摘すると関係がこじれることもあり、本人になじみの人や地域包括支援センターに相談し協力を求めることが大事」と語る。その上で「本人なりに外に出る理由があり、問題視して閉じ込めるとかえって状態が悪くなる。家族だけでなく地域の支援が必要で、近所の人や商店、飲食店、交通機関などで働く人、学生や子供も貴重な支え手になる」と話した。
http://mainichi.jp/select/news/20140204k0000m040147000c.html
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