65歳以上の高齢者における認知症は15%、462万人
認知症とはどういうものか?
認知症とは、いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったためにさまざまな障害が起こり、生活するうえで支障が出ている状態(およそ6ヵ月以上継続)を指します。
認知症を引き起こす病気のうち、もっとも多いのは、脳の神経細胞がゆっくりと死んでいく「変性疾患」と呼ばれる病気です。アルツハイマー病、前頭・側頭型認知症、レビー小体病などがこの「変性疾患」にあたります。
続いて多いのが、脳梗塞、脳出血、脳動脈硬化などのために、神経の細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなり、その結果その部分の神経細胞が死んだり、神経のネットワークが壊れてしまう脳血管性認知症です。
出典:認知症サポーター養成講座標準教材(特定非営利活動法人地域ケア政策ネットワーク 全国キャラバンメイト連絡協議会作成)
高齢になるほど高い認知症出現率
大塚俊男「日本における痴呆性老人数の将来推計」日精協誌 20巻8号:65-69, 2001年8月
認知症高齢者の現状(平成22年) - 厚生労働省
認知症有病率:65歳以上の高齢者における認知症は15%、462万人
研究目的
65歳以上の高齢者について「専門医による医学的判定」に基づき、全国規模での認知症有病率および有病者数、認知症前駆状態である軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment,以下MCI)の推定を試みる。同時に認知症者における介護保険によるサービスの利用実態を明らかにする。
研究方法
平成22年度に全国の各地域で疫学調査の結果に鑑み、高齢者人口の少なさに注目して、つくば市、福岡県久山町、大牟田市の中心部で調査した。いずれの地域でも無作為抽出により調査対象を選び、平成23年10月以降に、今日の世界的な認知症診断基準に則った評価と診察を行い、これに基づいて認知機能レベルを判定した。3段階からなる調査のうち、第1段階は事前調査員の家庭訪問による家族への聞き取りと、自宅または会場での調査員による対象者本人への面接調査である。第2段階は医師の面接調査、第3段階はMRI撮像と血液検査等である。用いるテストは今日の世界的スタンダード(Alzheimer Disease Neuroimaging Initiative: ADNIで用いられているテスト、また 精神状態短時間検査-日本版Mini Mental State Exam-Japanese : MMSE-J)で統一した。
結果と考察
今回の3地区の結果は前回の調査と基本的に同じ傾向を示した。すなわち都鄙によらず人口ピラミッドを補正したとき、認知症有病率は15%と推定された。この数値は、従来わが国で推定されてきた認知症の有病率10%程度に比べて高値である。その背景については、高齢者人口とくに後期高齢者人口の伸びと、全地域で統一された調査方法を用いる、自宅不在者も入院・入所先にて調査する、介護保険情報を活用する、といった取り組みによる診断率の向上があると考えられた。
結論
全国の65歳以上の高齢者における認知症有病率は15%と推定され、推定有病者数は平成22年時点で約439万人、平成24年時点で462万人と算出された。従来予想よりも多いが、そこには急激な高齢者人口の増加、平均寿命の伸びと診断方法の相違が寄与していると思われる。
【出典】厚生労働科学研究成果データベース
「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応」
研究代表:朝田 隆(筑波大学 医学医療系臨床医学域)
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