健康食品の機能性表示と市場性

suiso

2014年02月04日 08:04

■健康寿命の延伸と機能性表示
 安倍政権は昨年6月、成長戦略の一環として、健康寿命の延伸と機能性表示の導入を打ち出した。健康寿命(図1)は男性で70歳(80歳)、女性で74歳(86歳)で、それぞれ、平均寿命との差である10年ほどは、人の手を借りたり、車椅子や寝たきりの期間になる。

これを平均寿命の伸び率程度には、、健康寿命も伸ばそうというのが厚労省の政策だ。さらに、団塊世代の行動力に期待し、ロコモ対策などで、延伸を加速しようという取り組みも始まっている。行動力のある団塊世代で健康寿命の認知度が高まり、行動変容が起これは、予想以上の健康寿命の延伸が期待できるという指摘もある。
 安倍政権では、健康長寿延伸産業、あるいは次世代ヘルスケア産業などの呼び名で、これらの産業が成長戦略の中核になるとして支援体制を整えようと動き出した。医療費、社会保障費の削減効果に加え、消費の拡大などが期待できる。
 具体的な動きの一つは機能性表示の導入だ。「自分の健康は自分で守る。そのためには的確な情報提供が必要で、米国は機能性表示ができる」(安倍スピーチ)として、米国型の機能性表示制度の導入を宣言した。2015年春の市場導入に向けて、現時点では、出口だけが決まっている。

当面は3月24日の消費者意向調査の報告、昨年12月に発足した検討会の動向にかかる。経済効果についても、過去のケロッグ社の取り組みや、最近のトクホコーラなどの事例があるが、押し上げ効果は大きいと見られる。
 健康産業界では、機能性表示以上に、健康寿命の延伸に同調する声は大きい。運動や栄養はそもそも予防的に位置付けられ、サプリメントも、基本的には予防的な利用が多い。緩やかな老化、視力の衰え、疲労感、免疫力の低下、運動能力の低下、これらに対して、機能維持、健康維持のニーズは高く、今後のサプリメント市場の中核になるとの期待は大きい。

■2020年、5兆円規模へ
 今後の高齢者人口の増加、健康寿命の認知拡大とともに進む健康意識の向上、シニア層の購買力などを考慮すると、現在、トクホとサプリメントで2兆円近い売り上げは、当面5兆円を目指す動きになると見られる。第一に60歳以上のシニア人口の増加傾向か続くことがある。現在65歳以上で3,000万人の人口が、2030年には2~3割増加(図2)する。同時に、その層でのサプリメント利用は、他の年代層に比べ3~4倍に跳ね上がる(図3)わけで、相乗的な消費拡大が見込まれる。これに、政府の政策である機能性表示、健康長寿延伸産業の育成などが加わり、2020年で市場規模は現在の倍増、5兆円は射程距離にある。

■不当表示は厳しく規制
 機能性表示制度が導入される一方で、不適切な表示はこれまで以上に締め付けが厳しくなる。
 導入に先立ち消費者庁は、健康食品に特化した健康増進法・景品表示法上の「留意事項」を策定。違反となる具体例を明示した。「だんだん治る」といったダイレクトな表示だけでなく、消費者委員会がたびたび問題視していたいわゆる“イメージ広告”にくぎを刺す。「階段の昇り降りが楽々に!」「いつまでも若く」「テレビで紹介された」といった婉曲的な表示でも違反となる恐れがある。過去には「美容と健康に役立つ」といったありふれた表示が指導された実態も明らかになっており、「エビデンスなき機能性表示」については、新制度にかかわらず、厳しいチェックが行われることになる。

健康産業新聞 2014年1月1日 第1512号より

【消費者庁】食品の新たな機能性表示制度に関する検討会

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