小学館の週刊ビッグコミックスピリッツ『美味しんぼ』で、放射能被害と鼻血を結びつけるような記述が問題になっています。
産経新聞 2014年5月13日
さらに大阪でがれき処理の影響も大きいとあり、これに対して大阪府と大阪市は、「風評被害を招き、ひいては平穏で安寧な市民生活を脅かす恐れのある極めて不適切な表現」であると、平成26年5月12日発売の週刊ビッグコミックスピリッツ掲載の「美味しんぼ」の記載について、5月9日に続いて5月12日付で厳重な抗議をしました。
放射線と鼻血の因果関係についてマンガでは、「
まだ医学界に異論はありますが、鼻血や強い疲労感などその影響は十分考えられます」と書かれています。この表現は明確に断定しているのではなく、可能性を示しているものです。
マスコミで取り上げられるページの左に興味深い図があります。この中で、なぜ放射線が人体に良くないかが解説されています。
週刊ビッグコミックスピリッツ No.24 2014年5月26日号
成人の水分量は60~65%ですが、放射線は水の分子を切断して毒性の強いラジカルを発生させます。俗に言う「活性酸素」の一種です。
同様の説明が、活性酸素により「DNAが傷つき、細胞ががん化する」と科学誌にあります。
月刊ニュートン 2012年12月号
ですから、水酸基(・OH)を取り除けば、放射線による影響を減らすことができます。実際にアメリカ航空宇宙局(NASA)では、宇宙飛行中の放射線で誘発される酸化ストレスを軽減する方法として、2010年9月に「宇宙飛行士が受ける潜在的な放射線または有害事象の影響を、水素を吸引または飲料水として多く摂取することで新しい予防と治療戦略に可能性が高い」との見解を発表しています。
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NASAが宇宙の放射線障害予防に水素が有効とする可能性を発表
週刊ビッグコミックスピリッツ『美味しんぼ』に関する抗議文(大阪府・大阪市)
東日本大震災により生じた災害廃棄物の広域処理において受入対象としている廃棄物は、放射性セシウム濃度が100ベクレル/㎏以下のもので、科学的にも安全に処理できることが確認されているものであり、廃棄物処理法の規制を遵守することにより、適正に処理ができるものです。
大阪府、大阪市といたしましては、東日本大震災により生じた災害廃棄物の広域処理について、国からの要請や岩手県からの要請を受け、岩手県宮古地区の災害廃棄物を受入れることとし、平成24年11月29日、30日の試験処理による安全性確認のうえ、平成25年1月23日から9月10日まで本格処理を行い、処理期間中や処理後においても、放射能濃度や空間放射線量率、その他必要な項目について十分な測定を行い、その結果は府市ホームページにおいて公表しておりますが、測定結果は、全て受け入れの前後で変化はなく、大幅に基準値を下回るもので、安全に処理していることを確認しており、災害廃棄物の受入による影響は見受けられませんでした。
また、処理を行った焼却工場の存在する此花区役所、同保健福祉センター、此花区医師会に確認をしましたが、処理中においても、その後においても、作中に表現のある
「大阪で受け入れたガレキを処理する焼却場の近くに住む多数の住民に眼や呼吸器系の症状が出ている」というような状況はございませんでした。
「美味しんぼ 福島の真実編」抗議相次ぐ 「科学的にありえない」
産経新聞 5月13日(火)
京都医療科学大学の遠藤啓吾学長(68)=放射線医学=の話「低線量被曝が原因で鼻血が出ることは、科学的にはありえない。大量被曝した場合は血小板が減少するため、血が止まりにくく、鼻血が出やすくなるが、血小板が減るのは(がんの死亡リスク上昇が確認されている100ミリシーベルトの10倍にあたる)1千ミリシーベルト以上の被曝をした場合であり、それ以下の被曝では影響がない。住民も福島第1原発で働く作業員も、事故で1千ミリシーベルトを超える被曝をした人はいない。住民の被曝線量は大半が10ミリシーベルト以下。原発作業員の中に、白血球や血小板の数値に異常がある人がいるとは聞いていない。
もし低線量被曝の影響で鼻血が出るのだとしたら、一般の人々より被曝線量の高い放射線技師や宇宙飛行士は鼻血が止まらないことになる。福島の人たちは過剰な不安を抱くことなく、安心して生活してほしい」
2014年5月14日、国際宇宙ステーション(ISS)で日本人初の船長を務めた若田光一さん(50)らを乗せたロシアの宇宙船「ソユーズ」がモスクワ時間14日未明、ISSから離脱。地球に向け降下を始め、同午前5時58分(日本時間同10時58分)、カザフスタンの草原に着陸し、無事帰還した。
産経新聞 5月15日